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漂石彷徨



入蜀記

2013年8月10日~25日の日程で四川省の岩峰を登りに出掛けた。メンバーはMo、Km、Ng、Tgの4名。休暇その他の都合で期間は各自バラバラ。Mo、Ngは8月1日から入山していた。雨が多いと聞いていたが、ありがたいことに私の入山期間中は雨に降られることはなかった。

8月10日(土) 晴れ
Kmとともに成田からANAの夕方の便で成都に入る。出迎えのLさんは直ぐにこちらを見つけてくれた。成都は巨大な都市で人口は1,300万を超えるという。車の運転はかなり荒いようだ。成都市中心部に近い宿で同時期に入山するO隊のSnさんに挨拶した後、名物の桃を喰って寝る。

8月11日(日) 晴れ時々雨
成都から雅安・芦山・宝興・日隆を経て陸路目指す渓谷に向かう。最短の都江堰経由の道は前月からの大雨で不通になっていた。雅安は4月20日にあった四川大地震の余震とみられる大地震の震源地で、倒壊した建物が生々しい。所要約6時間。途中いわゆる「長征」で有名な夾金山(4,114m)の峠を越えた。日隆で驟雨に遭い、先行きに不安を覚えるが杞憂だった。国立公園域内の標高3,200mにある宿、Oh氏ホテルに一泊。一時下山してきたO隊の方々(O、Yn、Yzの3氏)と会食。

8月12日(月) 晴
標高4,000mのBCに向かう。目指す谷の入口は宿から車で20分。車中何故か最前線へ送られる新参兵の気分が想起された。谷の入口はトゥオラミ・メドウズのように美しい。ヤクの放牧や薬草採りでよく踏まれた道を進む。富士山よりも高いところにカラマツやモミの林が茂り、樹々の根元は屋久島を思わせる青々とした分厚い苔で覆われている。次々に現れる岩峰に目を奪われているうちにBC到着。所要2時間半。先に入山していたMo、Ngは3ピッチ目までの荷上げに行って留守だった。あまりにも暇なので取付(4,500m?)を見に行く。途中4,300m付近で下ってきた2人に会ったのでそのまま一緒にBCに戻った。
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8月13日(火) 快晴
Ng下山。Mo、Km、Tgの3人で4~6ピッチまでの3ピッチ分をFixする。初日からかなりハードに動いてしまった。

8月14日(水) 晴れ
レスト。何をしていたかほとんど記憶にない。

8月15日(木) 曇り後晴れ
1泊分のビヴァーク装備を持って3人でアタックする。荷物が重くFixの終了点に到着したのは13時を過ぎていた。そこから3pで肩に達し、更に3p岩稜を登って合計13ピッチで19:20頃標高約5,000mの岩峰の頂に立つ。写真撮影後直ちに下降開始。日没は20:00。9p目(Fix8p目)のビヴァークテラスに降り立った時には周囲は闇に包まれていた。
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8月16日(金) 晴れ
長い夜だった。眠れないままじっと星の動きを眺める。ロビンスの本に似たような一節があったことを思い出す。眠れないのはMoもKmも同じで夜中に2回もお茶を沸かして飲んだ。やがて東の山なみが白み出し、待ちに待った夜明けを迎えるが寒さで直ぐには動けない。7:00頃下降開始。落石が懸念された中間部の緩傾斜帯もMoの巧みな判断で驚くほどスムーズに下降することができた。8ピッチの懸垂下降で10:00取り付き。12:30BC着。BC帰着後は疲労でなにもできずほとんど寝て過ごした。
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8月17日(土) 快晴
レスト。朝食後にギアの整理。一日中ぼんやり過ごす。午後BC周辺のボルダーを少しだけ登る。
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8月18日(日) 晴れ
4時間ほどのハイキングで圏谷の奥にある湖(海子(ハイツ)という。)を見に行く。驚くほど水が澄み、湖面は神秘的な風情をたたえていた。岩壁に囲まれているため、こだまがよく返った。

8月19日(月) 晴れ
Km下山。MoとともにBCの側壁にアタックする。7ピッチで割と立派な頂に立つことができた。下降後、1ポイントだけエイドを残していた最初のルートの1ピッチ目のフリー化に向かう。疲労困憊の自分は登らずにビレーだけをするつもりでいたが、Moの勧めでリードさせてもらう。左のクラックの高い位置でランナーを取った後、3mのクライムダウンと5mのトラヴァースで右のクラックに移る。平地にあっても5.10b/cは十分あるだろう。ルート全体としても素晴らしいフリーラインになった。Moはとても喜んでくれ、BCまでの帰路ほとんどの荷物を担いでくれたが、感謝しなければならないのはむしろ自分の方だ。
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8月20日(火) 曇り後夜雨
レスト。ギアの整理と付近の岩でのボルダリング。4m程の石で解決まであと1手に迫った課題があったが、小雨がパラついてきたことと靴のゴムが惜しいことから諦める。夜、ここに来て初めてまとまった雨が降った。

8月21日(水) 晴れ
隣の谷を覗くため、BCの東のコルまで歩き、4,700m位の小ピークに立つ。往路3時間。復路2時間。

8月22日(木) 晴れ
BC撤収。標高3,200mのOh氏ホテル泊。隣接する谷の5,380mのピークの初登頂に成功したO隊の方々と健闘をたたえあう。Oさん、Ynさんはともに登攀史上の人物なので、同席できただけでも光栄だった。

8月23日(金) 快晴
O隊の方々とLさん、Ohさんの車に分乗し標高3,200mのOh氏ホテルから往路と同じ経路で成都に戻る。

8月24日(土) 快晴
成都観光。午前中に武侯祠を見学。昼食に火鍋を食し、Lさんの煎茶をご馳走になる。午後は金沙遺跡を見学。カルフールで土産に月餅などを購入後、Jさんお薦めのハルピン餃子で晩餐。

8月25日(日) 快晴
成都から成田。帰国。
by tagai3 | 2013-09-01 10:35 | クライミング | Comments(0)
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岩登りについての所感

by tagai3