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漂石彷徨



陽成院

2月15日(日)
同所。最初に犬の声が聞こえた時はさほど気にならなかった。それがだんだん近づいていることに気づいた時、にわかに不安になってきた。最寄りの民家はここから歩いて小一時間はかかる。するとあの犬は普通の飼い犬ではない。猟犬か?野犬か?いずれにしても危険であることに変わりはない。丁度5メートル程の石にロープを垂らして掃除の準備をした時だった。岩の裏面の傾斜は緩く、犬なら容易に駆け上ることができるだろう。ロープにぶら下がってやり過ごすにしても、一体どれだけ辛抱したらよいのか?荷物はどうする?地味な服装を獲物と誤認されて散弾銃で撃たれでもしたら、それこそ一巻の終りだ。嗚呼、面倒なことになった。そんなことを考えている間にも、鳴き声はどんどん近づいてきた。ついに200メートル程先の舗装道路の角に茶色い獣の姿を認める。体長1メートル。秋田犬のような姿だ。覚悟を決めてロープにぶら下がる。犬はしばらくこちらに向かってしきりに吠え立てていたが、ある時を境に急に鳴くのを止め、いつの間にかどこかに行ってしまった。人の気配がないところをみると、やはり野犬だったのだろうか。
そのまま2時間、苔との格闘を続ける。いい加減腰が痛くなって小憩していると正午の時報が聞こえた。その後、1時間だけ触る。重要そうなホールドが欠けてしまったが、何とか解決できそうな気配はある。

2月21日(土) 晴れ
同所。日陰の積雪約5cm。件の石は谷間の風が通らないところにあるため濡れていた。あのホールドは濡れていて止まるほど甘くはない。徒歩30分のアプローチは全くの徒労に終わった。完全に登る気でいたので至極残念。まあ、こんな日も珍しくはないのだが。

2月28日(土) 晴れ
同所。行くつもりはなかったが、偶々時間が空いたので行くことにした。11:00発13:00着。登攀開始14:00。木曜の雨にもかかわらず、フェイスは思いのほか乾いていたが、クラックはしみ出していた。やや右側からスタートし左足を小スタンスに乗せるという一手目の勘所を思い出すまでに時間をかけ過ぎ、無駄撃ちしている間に大切な指皮を削ってしまう。何度目かの左手のデッドポイントを取り損なった際、指の甲側を擦りむく。傷は小さかったが岩の粒子が荒いためか、結構長い時間出血が続いた。
当初、中間部のシワをクリンプで刻む方法を考えていたが、右面の苔を剥がすと上手い具合に足を乗せられそうなクラックが出て来たので一気に右上のポケットを狙う方法に切り替える。だが問題はポケットの内面がギザギザしていて痛いことだ。取り損なえばますます指皮が削れてしまう。
3度目にしてようやく止まる。やった!ついに解決できた!今宵の晩酌の味は格別だろう等と思ったのも束の間、不用意に持ったリップのエッジが剥がれ、それを右手に持ったまま足を下にして4m下の地面へ。抜け口は全く問題なかったのに...。杉の枝が積もった下地は柔らかく怪我はなかったが、右手に持ったままのエッジの破片を地面に叩き付けたのは言うまでもない。ボロボロになった指皮の回復には2週間はかかるだろう。16:55撤収。こんなに遅くなったのは初めてだったが、おかげで帰路の渋滞状況を学習できた。

3月14日(土) 曇
同所。6:10発。8:30着。麓の山門から岩場まで頑張って歩いて17分。呼吸が落ち着くのを待って9:00登攀開始。集中できたためか、この日1回目で登れる。掃除し始めた時には二、三段はあると思っていたが、登れてしまえば意外に呆気ない。1級位にも感じるが、みたけの「でっどえんど」や「ねこすな」等よりも確実に難しく、おがわやまの「さつき」等と同じ種類のムーヴで同程度の難しさはあるようなので、初段は付いていいと思う。元々は別の人が見つけたエリアで、決して日の目を見ることなく再び苔に覆われるのは時間の問題なのだが、結構いい課題だった。右側のクラック(以前福岡のU君が登ったという。)を掃除して登り、11:00撤収。梅は綺麗だったが、杉の花粉は辛かった。
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by tagai3 | 2015-03-01 10:49 | クライミング | Comments(2)
Commented by 隣県人 at 2020-01-26 12:44 x
突然のコメント失礼します。
先日登ることができました。素晴らしい課題を残して頂き有難うございます。
Commented by tagai3 at 2020-02-04 23:01
おめでとうございます。登ってもらえて嬉しいです。
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岩登りについての所感

by tagai3