漂石彷徨



ゴーストステップ

ようやく池田フェイスの「ゴーストステップ」をレッドポイントすることができた。混雑回避でいつも暑い季節(2007年夏、2008年晩春、早秋)に来ていたことや、病後の体調確認のために取り付いていた期間(2014年春ゴールデンウィーク)もあったことから、10年越し、30回近い(27回?)トライを繰り返す結果となってしまったが、登れたことは非常に嬉しい。貧弱なスタイルであったことについては当然自覚しているが、加齢による体力と気力の衰えや、現下の生活環境を考えると、毎回漸進的な改善を感じながら取り組めたことはそれなりに楽しく、今の自分に相応しい登り方であったような気もする。

ルートの長さは12、3メートル。鏡のような垂直のフェイスに走るリス沿いのホールドを拾って直上する。一見アーケに終始する単純な保持力勝負のルートに見えるが、サイドプル、フィンガージャム(右手人差指のテーピングが有効)、ピンチグリップ、アンダークリング、二本指と一本指のポケット等々、多彩なホールディングが要求される。傾斜がない分、かなり悪いホールドでもある程度なら耐えられるが、指だけに意識を集中させるとあっという間に腕が張り、力が続かなくなってしまう。「幽霊の足跡」とはよく言ったもので、フットワークが攻略の鍵だった。靴はきつ目の方がいい。壁面から飛び出したホールドはほぼ皆無で、ポケットのエッジに押しつける様なスタンスが随所に出てくる。この点は昨今の人工壁の課題とは対局にあるといえよう。

核心は大きく分けて次の4つ。私は④の解決に一番苦労した。クイックドローはやや長めのものを使用し、カラビナは全てゲートを左向きにした。
① 離陸してからボルト2本目右上のポケットを取るまでの一連の動き
② 左手の穴と右手のピンチグリップを使って立ち込み、ボルト4本目直下のガバを取るところ
③ ガバから右手アンダーで体を上げ、左手2本指、右手1本指のポケットをつなぎ5本目のボルト右側のクリンプを左手で取るところ
④ 左手でクリンプを保持しつつ、右手でクロス気味に5本目のボルトにクリップし、J字型のホールドで体を上げるところ

チャートという岩質から、気温の条件も無視できない。3年前の春に全く保持できなかったホールドが今回はあっさり持てたことに驚いた。気象庁の過去データで見ると、最高気温で14℃、平均気温で20℃もの差があったことが分かった。汗ばむ時季に登れるほど甘くはなかったという証左であり、ムーヴそのものが全く別物になった。

ボルトについては、Free Fan 41号で紹介された直後の2003年7月にJFAが終了点の打ち替えとハンガー3枚の交換を行ったあるが、既にその時から14年近くが経過したこともあり、腐食はボルトの軸の部分まで進行している様に見受けられた。これに動荷重を掛けると思うと気持ちが委縮するが、そうかと言ってトップロープでは真上のロープが邪魔をしてムーヴを起こせないため、やむなくハングドッグでムーヴを確認したが、毎回ビクビクしながら取り付いていた。外側が雄ネジなので「KURE556」などの防錆潤滑剤を使えば軸だけ回して取り替えることもできそうだが、面倒臭さに加え「自分だけは大丈夫」という安全バイアスが働いたせいで結局実行できなかった。低すぎる1本目はボルトそのものが不要だとしても、せめて3本目と4本目はなんとかしたかった。

2017年1月14日(土)リード×2回
寒い時期に来たのは初めてで、フリクションの良さに驚く。3年前のことはほとんど忘れており、スタート部分に苦労する。何となく雰囲気が変わったように感じていたが、どうやら木が2本程切られたらしい。用事のため早めに撤収。

2017年1月22日(日)リード×2回、TR×1回
本来やるべきことを放擲して毎週遊び歩いていることへの自責の念に苛まれ、行為の意義について自問自答する。アップで取り付いた「ファーストフィンガー」に怖さを感じたのは寒さの所為か。指の痛さもあって3回が限度。各駅停車ながらムーヴを再構築できたのでとりあえずよしとする。

2017年1月28日(土)リード×3回、TR×1回
1回目でガバまで、2回目でガバから先がつながり、後の2回は上部を練習。ようやく3年前の春の状態(1テン)まで戻ることができた。

2017年2月4日(土)リード×4回
久し振りに他パーティ(2人2組)に遭遇。諸々の文化の相違に驚く。1か月近く雨がなく、カラカラに乾燥した人工林の中で「焼き石」をコンロで炙って平然としていられる神経が信じられない。スギやヒノキは生木でもよく燃える。万が一コンロが倒れて火事にでもなったらどうするつもりなのだろう。これまでベストシーズンを避けてきた理由を思い出す。気が散って集中できず。

2017年2月11日(土)リード×2回
1回目は最後のクリップ直後にスタンスを間違えて失敗し、2回目でRP。逆上がり居残り練習から解放された子供のような気分。正午過ぎに撤収し、帰路、秋川の中華料理店でささやかなお祝いをする。晩酌では350mlの銀河高原ビールを2本空けた。
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by tagai3 | 2017-02-13 23:02 | クライミング | Comments(0)
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岩登りについての所感