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漂石彷徨



晩秋

11月3日(木) 文化の日 曇り時々雨後晴れ
キューピーママへ。追悼集会の時は左の「鼻」を越えるラインに拘泥して触らなかったので、実際に登るのは今回が初めて。生まれる際に右脇腹に擦り傷を作ってしまう。Sも誕生こそ問題はなかったものの、上部のレイバックに苦労していた。静かで見晴らしの良い岩頭に立てるのは実に気持ちがいい。下降後、軽い気持ちで隣接する岩峰の「祭りの後」に取り付くが、結局この日は4回やっても登れなかった。途中2ヶ所、比較的重要と思われるホールドを欠いてしまう。こうしたフェイスルートのレッドポイントは随分長い期間やらなかったので、少しは練習しなければいけないと思った。
・「生まれる気分」(5.8) 15m
・「祭りの後」(5.12b) 15m×4回

11月4日(金) 有給休暇 晴れ
元々は広島に行くために取った休みだったが、このところの陽気では蜂もまだまだ元気だろうということで、結局は奥秩父を周ることになった。折角の機会なので、バッサリと切り捨てられた破片を拾い集めて、自分なりの印象を繕うような気持ちで涸沢Ⅱ峰に向かう。1時間強のアプローチも、行程の半分は平坦なのでそれほど辛くはなかった。同じ小川山であれば、砦岩や屋根岩5峰の方が辛いかもしれない。取り付きから眺めるⅡ峰の正面はなるほど傾斜はないが、価値観の見直しが進行する過渡期において、無理のない形でフリーによる初登攀を実践しようとしたならば、傾斜や形状や草付きの状態から見てこれほど相応しいラインはなかったのではないかという印象を持った。1ピッチ目は易しいが、5.10aなりの動作は出てくる。自然の形状を追いながらプロテクションを設置するクライミングは実際楽しいものだった。2ピッチ目は出だしを右に巻いてしまうとオリジナルルートになりそうだったので、正面のOWを登る。わずか2、3手でリップに手が届くが、ニーバーやフィストジャムを交えた動作は結構面白い。「岳人」のこのルートを紹介した記事(1980年1月号)の中には、次のような記述があった。
広瀬「ダイレクトには120度ぐらいのオーバーハングがあるんです。クラックがあって、そこにヘキセントリックの十一番を入れてランニングをとり、フリーで越えました。ハングを抜けるところは頭より上に足をあげて、岩の突起にクライミングシューズのかかとをひっかける。手前に引くとはずれるから、下に押しつけるようにして、あとは腹筋の力でグッと身体を起こしながら、レイバックの手を持ちかえて立ち上がるんです。」
確かにこのようなムーヴになる。いくら慣習的にオリジナル・ルートと絡めて登られているとはいえ、ここを巻いてしまっては、ダイレクト・ルートとはいえないのではないかと思った。
そこから大岩の連なりを2段ほど越えると、10m程右手にはオリジナル・ルートのものと思しきRCCボルトのビレー点が見えるが、そのまま緩傾斜帯を辿り最後のクラック直下でビレーした。クラックの中には回収不能になったカムが2つ残置されていた。比較的新しく、このルートの人気の程が伺えた。出だしで一歩上がってからハンドジャムをきめるまでの動作は、身長がないと辛いかもしれない。そこから先はクラック外側の節理が拾えて容易になるが、個人的には残置のカムを避けるのに難儀した。このピッチも確かに短いが、小川山レイバックと同等程度のクオリティは十分にあるような気がする。岩頭に立ち、静かな秋の山並みを眺めていると、深山にいるような心地がして非常に爽快だ。終了点のすぐ右下にⅡ,Ⅲ峰間ルンゼに降りる下降点があり、30mの懸垂で沢床へ。若干の歩行を交えて更に15m×2回の懸垂で取り付きのすぐ脇に出た。実にいいルートだ。1時間程度歩く価値は十分にあると思う。
帰途、初めてガマスラブを見に行く。「ガマクラック」は短いが楽しいルートだった。
・「涸沢Ⅱ峰正面ダイレクトルート」(5.10a,5.8,5.9) 35m,25m,5m
・「ガマクラック」(5.10a) 15m

11月5日(土) 晴れ
途中にザックをデポし、ロープとヌンチャクだけを持ってキューピーママへ。この日最初のトライで「祭りの後」を登ることがきた。体が温まっていなかったためか、指がやたらと痛かった。植樹祭エリアを巡り、最後に静寂谷へ。「チムニーのトラベルチャンス」を登る。比較的登り易く感じたのは、最近意識的に内面登攀に取り組んできたおかげだろうか。とにかく内容は素晴らしい。ひとまずこれでこのエリアのトラベルチャンスを全て登ることができた。Tさんありがとうございました。
・「祭りの後」(5.12b) 15m
・「静寂谷チムニーのトラベルチャンス」(5.11a) 15m
by tagai3 | 2011-11-09 20:03 | クライミング | Comments(0)
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岩登りについての所感

by tagai3