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漂石彷徨



ボンボリーの確保技術

これまでもたびたび驚くような光景を目撃してきたが、その中でも今日の凄さは5本の指に入るものだった。仕事が早く終わったのでK東区のF川スポーツセンターへ。入っていくと高さ4m程のボルダリング用の人工壁で東京に所在する山岳連盟の指導員と称する3人の老人がなにやら大騒ぎしている。何でもホールドが回ったとか。締め直しをすると言って始めた行為が凄かった。9mmロープを人工壁の外枠に直掛けでトップロープ状態にし、電動ドリルやらレンチやらを沢山ハーネスにぶら下げて、3人掛りで20分近くひーこらとやっている。彼らの言い分では脚立では利用者に迷惑がかかるのでこの方法にしたんだとか。けれども、梯子状にガバが付けられて、下に分厚いマットが敷かれた4mのボルダーを登れないようではそもそも壁の管理も覚束ないだろうし、駅の階段を登るのにも確保が必要になってしまうだろう。見るからに危険なトップロープを見ていたら、残置スリングにトップロープを直掛けして事故を起こしてしまう人がいまだに結構いるということの理由が分かる気がした。行為自体も凄いのだが、その言い草がまた凄かった。何と「作業中でも構わないから、どうぞ登ってください。」と言うのだ。4mの幅しかない中でそんな作業をしていたら、登れる訳は無い。第一、「壁に取り付くのは1回につき1人」という注意書きの文言はどこに行ってしまったのだろうか。
ようやく終わったと思って件のホールドを見てみると、これまたビックリ。30cm程のスローパーの持ち手の真ん中に廻り止めのビスが打ってあり、しかもそれが奥まで入らずに5mm程飛び出している。知らずに跳び付いたりしていたら、間違いなく指を切っていただろう。いくらなんでも酷いので、直ぐに理由を説明して外させたが、彼らは何かブツブツ言っていた。「私がやりましょうか?」と持ちかけても、「何かあったら自分達の責任を問われるので、自分達でやらなければいけない。」と言って一向に埒が明かない。たった2本のビスを外すのに更に20分。終わった段階で「これでいいですかね?大丈夫ですかね?」と確認を求めてきたときには、さすがに頭に来て「責任を云々しておきながら、今更聞きくな!」と吐き捨てるように言ってしまった私も大人げなかったが、怒鳴って然るべき十分な理由はあっただろう。挙句の果ては「このホールドを設置したのは自分達ではないからどうしてこうなったかは分からない。」と言い逃れをする始末。おいおい、責任はどうした。もう支離滅裂だ。
あらゆる登攀技術や確保技術には、そうするに至った明確な理由が存在する筈だが、彼らのロープ操作には、そうしたものが全くない。唯一の目的があるとすれば、それは知識や経験や技術の無さを取り繕うための装飾的な儀式としてのものだろう。飾れているようにはとても思えないのだが、一般人の無知に付け込んで何食わぬ顔でやり過ごしているのだから恐れ入ってしまう。こんな連中に付き合わされて「私が設定しました!」という間抜け面の看板を晒されている某プロクライマー諸氏が気の毒でならない。もっと気の毒なのはこんな連中に指導されて初めてクライミングというものに触れなければならなかった江東区の子供達だろう。事故が起きないのが不思議な位だ。区や深川SCの担当者も、もうちょっと勉強して考え直した方がいいと思う。もし都岳連という団体にほんの僅かでも組織としての判断力や良心があるのなら、いい加減クライミングの知識も経験もないハイキングクラブの老人を派遣するのはやめてもらいたい。彼らの存在自体が大きなリスクになっているからだ。
by tagai3 | 2013-06-20 22:35 | クライミング | Comments(0)
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岩登りについての所感

by tagai3